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【014 タイしゃぶ】1995年8月21日

先週水曜日の晩、学生時代からの友人であるDMの久しぶりの帰京を祝い、神宮外苑の、とあるタイ飯屋で宴が催された。

バンド仲間、友達の友達関係で9人ほどの集まりとなった。
メンツは、キーボードのTS、KK、サックスのTT、ベースのDM、美女4名、そして私ドラムのHOだった。

キーボードの一人、TSは某百貨店で人事チームという部署に所属しているが、お尻について造詣が深いという点では、彼の右に出る奴は居ないだろう。

1年下のキーボード、KKは某都銀に勤務している。
そのぎこちない仕草から、大学当時は“マリオネット”と愛されていた。

TTは当時、大学のビッグバンドに所属していたが、私達のバンドのホーンを手伝ってくれていた。

DMは、最近文筆業にも手を染めていて、彼の執筆した“関西レポート”の中で、今年春の米国出張の折、ダンサーのいる店で、「ダンサー相手に変拍子について意見を交換した」事や、「この手の店での遊び方は、HO(私)が詳しい」という様な事を吐露している。

名誉のために言っておくが、『決して私が好きなのではなく、私のお付き合いしている方々が、とても積極的でいらっしゃる』ということだけは明確にしておきたい。
誰も信じないか?

しかし、米国人ダンサー相手に変拍子について議論を戦わしたりする奴は、あまり居ないと思う。

前置きが長くなってしまった。
という訳で当然、主役はDMなのだが、密かに『今日の主役はKKだ!』と言われていた。

それは、やはり彼の一風変わったキャラクターとその謎めいた行動、そして彼が私達の宴会から一年ほど遠ざかっていた、ということに起因している。

宴も盛り上がってきた頃、DMがKKのスーツに関して話題を振った。
私も以前に聞いたことがあるような気もしたが、KKが言うには「スーツは一着を一週間着続けて、汗を吸い少々重量が増えた頃、クリーニングに出す」ということだった。

予想通り、皆の間から驚きの声があがった。
するとKKは当然のような顔をして、「HOさん(私)、毎日スーツ換えるんですか?」と聞いてきた。

私は綺麗好きなので、お泊り以外は二日続けて同じスーツを着ることはない。

KKは、しきりにクビを傾げていた。


その晩、私達が戴いたのは3,900円のタイしゃぶのコースだった。

値段の割に前菜、サラダ、メイン等かなりのボリュームがあった。
その上ラッキーにも、このチェーンのメンバーさんであるA嬢が2割引のチケットを持っていた為、私達はその恩恵に預かることができた。

当然、私もメンバーさんになるべく、申し込みの書類は提出しておいた。

皆が楽しく食事を戴いているのを余所に、甲殻類アレルギーのKKは、前菜にもメインにも蟹が含まれていた為、料理に積極的には手を出さなかった。

これを見た心優しいTSは、KKが食べられそうなものを鍋からKKの皿へ取り分けてあげていたが、たまに、とぼけて蟹や海老を入れようとすると、KKにすかさずチェックされていた。

鍋の具は白菜等の野菜類、ツミレ状の物を含む点心系、そして魚介類等から構成されていた。
魚介類としては前述の通りKKの大好きな?蟹、海老、そして烏賊、白身の魚等が皿に盛られていた。

具を鍋に入れる際、『この白身の魚は何か?』が、皆の興味の対象となった。

私は自信がなかったので、「鱈かなぁ?」と曖昧に言ってみたが、それを制してKKが自信満々に断言した。

「これは鯛ですよ〜。だって、“タイしゃぶ”って書いてあったもん!」と。

瞬間の静寂と、大爆笑が辺りを包んだことは言うまでもない。
さすがは、影の主役である。


P.S. ダンサーはこんな曲で踊っていたのだろうか?
   Metallica - Master Of Puppets With lyrics


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