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【016 オッチャン】1995年11月26日

我が社にNさんという男性がいる。

年齢は50代の後半だろうか。
四国の大きな企業グループから出向で来られている。

高知弁?(関西弁のような)で良くしゃべり、酒も大好きだが、ちょっとせっかちでそそっかしい。

良くあるのが、ファックスの送信ミスである。
私の机の近くにファックスが有るが、相手先が電話に出てしまったり、
「お掛けになった電話番号は現在使われておりません。……」という状態が頻繁にある。

この様な時は、殆どNさんの仕業である。
でも私達は、そんなNさんを親しみを込めて“オッチャン”と呼んでいる。

数週間前の昼飯時の事だった。
私達は五人で会社近くの“キッチン カミヤマ”という洋食屋に向かった。

カウンターだけの店である。
混んでいたため、二手に分かれて席についた。

私はH取締役、S経理部長と座り、少し離れた場所に一つ上のA先輩とオッチャンが座った。
カレーのメニューが中心だが、他にも生姜焼き、ピラフ、ナポリタン等がある。

各自の料理が出てきて、私はその日チキンカレーを食っていた。

暫くしてオッチャンの辺りが、にわかに騒がしくなった。
反射的にそちらを見ると、A先輩が慌てた様子でオッチャンに何か指摘している。

オッチャンの前には、定食の付け合わせの野菜にかけるフレンチドレッシングのお椀が置かれており、オッチャンの右手にはスプーンが握られていた。

オッチャンはフレンチドレッシングをスープと勘違いし、美味しくすすっていたのだが、数口行ったところで、あいにくA先輩に見つかってしまい、あえなく阻止されてしまったのである。

オッチャンの反応は、「どうりで酸っぱい筈やっ!」というものだった。

それを見たカミヤマのママは、「大丈夫ですよ。前に全部お飲みになった方もいらっしゃいましたから!」と言っていた。

どのように『大丈夫』なのだろうか?
フォローになっていなかった。

それを見ていた私は、『ネタ、貰いっ!』と大喜びしていたが、私の隣に座っていたH取締役は「他人のフリしようっ」と顔を上げようとしない。

極めつけは、その後のオッチャンの一言だった。
関西弁のような高知弁で、「わしゃ、酸っぱいもん好きやからねっ!」とのこと。

愛すべき人である。


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