今日この頃

日常生活の中で経験した、チョット気になる出来事を綴りました。 チト古いけど、案外笑えます。

028 お弁当

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【028 お弁当】1996年2月1日
         Written by HT(【レバ1】【レバ2】に登場の“T君”)

会社のNAさん(【レバ1】【レバ2】ご参照)にお願いして作ってもらっている昼飯の弁当が、今日から550円になった。

50円の値上がりである。
お願いして作ってもらっている立場の私としては、文句が言えない。

今朝受け取った半透明の弁当箱は、中身が透けて見えた。
気のせいか、普段より豪勢な感じがした。

『お世辞の一つも、かましとくか!』と思い、「今日はいつもより豪華だなーっ!」と大袈裟に感動してみせたが、NAさんの笑顔はちょっと引きつっていた。
具合でも悪いのだろうか?

さて、やっと待ちに待った昼飯の時間になった。
私はいつものように弁当箱を電子レンジの中にぶち込み、タイマーをかけてワクワクしながら待っていた。

1分ほど経過した時の事だった。
部屋中に“バコンッ”という大音響が鳴り響いた。

私は驚いて立ち上がったが、出所はどうやら電子レンジのようだった。
開けて見ようかと思ったが、少し恐かったので“チーン”と言うまで待ってみた。

私は恐る恐る電子レンジのドアを開けてみた。
特に変化は見られなかった。

そっと右手を伸ばし、人差し指で弁当箱を突っついてみたが大丈夫だった。
両手でそっと弁当箱を取り出し、テーブルの上に置いた。

緊張しながら蓋を開けてみた。
湯気と共に旨そうな香りが辺りに広がった。
中身も特に異常は認められなかった。

私は我慢しきれず、箸を取り食い始めた。
なかなか旨い。

ツナサラダが入っていた。
『ツナサラダは、温めない方が良かったかな?』と思いながら、箸でつかもうとした。

“カチッ”という、硬い手応えが有った。
『さっきの爆発で固くなっちゃったのかな?』と思いながら、箸でつかみ上げた。

次の瞬間、私は口の中の物を全て吹き出してしまった。

私が箸でつかみ上げた物は、私が数日前、NAさんのバッグの中に忍ばせた人体模型のオッパイだった。

今日は彼女に見事にしてやられた。

爆発の原因は、どうやらこのオッパイだったようだが、外観は無傷だった。
商売道具なので、念の為、“舐めるように”チェックしておいた。

Arranged by HANK


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027 マニア

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【027 マニア】1996年2月5日

1月6日土曜日。

私は15:08新宿駅発、高尾山口行きの京王線に飛び乗った。
その電車は急行だったので、私の実家のある八王子の北野という駅にも停車する。

新宿駅で発車時間が迫っていたので、私は後方階段近くの車両に飛び込んだ。

しかし、その瞬間に私は車内に立ち込めるタクアンの臭いを嗅ぎつけた。
タクアンは好きだが、その臭いは特にこの様な暖かい密室では、殆どウ○コの香りに限りなく近付いてしまう。

私はその臭いのしない位置まで車内を後方に向かって移動した。
『そろそろイイナ』と思った所で立ち止まりバッグを網棚に上げ、中から文庫本を1冊引っぱり出した。

急いで飛び乗ったにもかかわらず、発車まで少し時間が有ったようで、電車は直ぐには発車しなかった。

立って吊革に掴まりながら私は本を読み始めたが、車内があまりに暑いのでジャンパーを脱ぎ、それを網棚の上に放り上げた。

そうしているうちに電車は走り始めた。
私の目の前には中学生か高校生らしい娘と母親の二人が並んで座っていた。

私は直ぐに、二人の様子が怪しいことに気が付いた。
娘が母親越しに隣の乗客を見ながらコソコソ話をしている。

私も、その視線の方向に目を向けた。
そこには女性が座っていた。

彼女の手にはシングルCDの様な物が握られていた。
眼鏡をずり上げ良く見てみると、あのSMAPの“しようよ”である。

元学生ミュージシャンの私達仲間内では、最近SMAPの存在が再評価されている。
正確に言うと、SMAPそのものが評価されているのではないが。

と言うのも、昨年前半?に流行った“たぶんオーライ”の曲中のドラムソロが凄いのである。
とてもアイドルグループの曲に相応しくないドラムソロなのである。

私は最初にこれを聴いた時に興奮し、恥ずかしさを省みずシングルCDを衝動買いしてしまった。
しかし、ドラマーまでは判明しなかった。

確かバンド仲間で飲んでいる時に、私がそのドラムソロの話をしたら、「あれはオマー・ハキムかもしれない。」とか、「いや、デニス・チェンバースに違いない。」など議論が白熱した。

Omar Hakim


Denis Chambers


また、あのブレッカー・ブラザースがSMAPと一緒に“笑っていいとも”に出演していたなどという話も耳にした。

Brecker Brothers


ある雑誌で見たSMAPのニュー・アルバム評では、「歌の軽さと、バックの演奏の素晴らしさは好対照。」といった皮肉たっぷりの解説があった。

そして、京王線の彼女が手にしている“しようよ”も、なかなか良い曲である。

最初は長髪に隠れていて顔が良く見えなかったが、良く見てみると40歳は越えているように見えた。
さらに、そのボサボサの長髪には白髪も混じっていた。

要するに、私の前に座っている娘は、「このオバサン、なんでSMAPのシングルCDなんか持ってるんだろう?」と、母に言っていたのである。

確かに不思議である。
31歳の私が持っているなら納得できる?が、どう見ても40過ぎのオバサンが持っているのは怪しい、と思う。

彼女のファッションもチェックしてみた。
両耳にはヘッドホンステレオのイヤホン、黒の皮ジャンの下には赤のトレーナー、ズボンは紺のコーデュロイで決めていた。

そして、バッグはタスキ掛け、足元にはデパートの紙袋二ヶという具合である。

その間、彼女はCDを透明のビニール袋から取り出し、舐め回すように見ている。
多分、『早く聴きたいのに、ワクワク。ディスクマンなら今直ぐ聴けるのに、ガッカリ』といった心境だろう。

暫く私は本に熱中してしまい、ハッと気付いて彼女を見てみると、今度はビデオを手にしていた。
ビデオの外箱には“ロック50年の集大成”と書かれていた。
再び驚きだった。

しかし、これではっきりした。
やはり彼女はかなりのマニアで、バックのミュージシャンの演奏が聴きたくて“しようよ”を購入したものと、私は勝手に判断した。

「でも、それならアルバムを買った方がいいよっ!」とは、隠れSMAPファン?の私としては言えなかった。

彼女はビデオのライナーノーツをじっくり読んでいた。
電車は明大前に到着し空席ができたが、私はその場所を離れるのが惜しく、そのまま立って観察を続けた。

もう読書など、上の空である。

明大前を出ると、彼女は紙袋から別のビデオを取り出した。
同じシリーズ物の様である。
かなりのマニアである。

きっと彼女と音楽について語ったら相当盛り上がるであろうことは、容易に想像できた。

シャイな私は、ついに声を掛ける事ができず、彼女はつつじヶ丘で下車してしまった。

彼女がほんの少し若く、ほんの少しイイ女だったら声を掛けていたかもしれない。
ホントか?


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026 タイムスリップ

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【026 タイムスリップ】1996年2月2日

1996年、当社の仕事始めは1月5日金曜日だった。

夕方、初詣ということで10人ほどで浅草寺に繰り出した。

雷門を抜け浅草寺に続く仲見世通りは面白い物が多く、いつものようにキョロキョロ歩いていると置いて行かれてしまうので、その度に走って皆に追い付いた。

皆でお参りした後、私達は花やしき前を通って“一文”という昔風の居酒屋に入った。
すごい久しぶりに行ったが、相変わらず不思議な雰囲気の店だった。

店では“一文”とか“十文”と書かれた木札が通貨となる為、まず現金をその木札に両替する。

店内には微かに新内の音が流れ、下町で粋な遊びをしているような気持ちにさせてくれる。

更に時折、重低音の鐘の音が聴こえたりする。
同席していたある人は、本当に近くで鐘が突かれているものと思っていたらしい。

また、料理の出し方、盛り付け、器なども工夫されていて面白い。

私達がほぼ出来上がった頃、冬休みで秋田に行っていたご長男を東京駅まで迎えに行かれていたKS部長が親子二人で合流した。

早速、駆け付け三杯召し上がったところで、私達は一文を後にし、二軒目を探した。

結局、私達は少し歩いた所にあった“鮒忠”になだれ込んだ。
KS部長親子には鍋を中心に食べていただき、他の私達はただひたすら飲んだ。

KS部長親子の腹が満たされた頃、私達は相当良い気分になっていた。

暫くして宴がお開きとなり、店を出た。
皆各々駅へ向かって歩き始めた。

私達はその界隈で凄い店を発見した。

私は少し酔った頭で、相変わらずキョロキョロしながら歩いていた。
歩道沿いの店を眺めながら歩いている時だった。

その店は素通しのガラス張りで店内が覗けた。
カウンターだけの店のようだった。

しかし、入口が無いのである。
客と思しきオバサンが座っているカウンター側には、入り口が無い。

『変だな?』と思いながら5歩ほど通り過ぎた所で、どうしても確かめたくなり、私は「今の店、入口が無いっ!」と叫んで、小走りに戻ってみた。

近くを歩いていたTTさんも一緒に来た。
二人で店の中を覗いてみた。

入口はあるが、厨房と呼べるかどうか分からないような、とにかくカウンターの内側に通じる入口しか見当たらない。
おかしい!

もう少し観察を続けてみた。
ところが違ったのである。

私達が見ていたのは客用の入口だったのだ。
客は立って飲んでいるのだが、逆サイドに座っていたのは店のオバサンだったのである。

客は立ち飲み、ママはカウンター内で座って飲み、更に何かつまんでいるようだった。

これが下町の常識というものなのか!
私達二人は酔いも手伝って大笑いした。

その店は確か、“味処 永九”という店だったと思う。
店のキャッチも洒落ていた。
「酎ハイの旨い店」とのことだった。

他にも洒落た店があった。
昔ながらの婦人洋品店といった風情の店だった。

外に向けてディスプレイしてある服の一着一着に値段と併記して、「美しい色使い」とか「しゃれたデザイン」とか一言ずつコメントが書き添えられているのである。

私が見ると「美しい色使い」や「しゃれたデザイン」には全く感じられないが、プロの目には、そのように映るらしい。

やはりこのようなポップが、下町婦人達の購買意欲を掻き立てるのだろうか?

とにかく、カメラ片手に是非もう一度あの辺りを散策してみたい。


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